第31回 CSVの整理ができるようになると、AIの使い道は一気に広がる

AIに仕事を任せたい、という話をすると、つい文章作成や企画書づくりの方に目が向きがちです。

もちろん、それもAIの大事な使い方です。しかし、実際の仕事の現場で時間を奪っているのは、案外もっと地味な作業だったりします。

たとえば、表の整理です。

顧客リストをまとめる。
申込データを整える。
売上表を並べ替える。
名前の表記ゆれを直す。
不要な列を削除する。
空欄の行を取り除く。

こういう作業は、一つひとつは難しくありません。しかし、件数が増えると、すぐに面倒になります。しかも、手作業でやると、意外にミスが出ます。

ここで、AIとPythonの組み合わせが効いてきます。

特に大事なのが、CSVです。

CSVというのは、簡単に言えば「表データをテキストで保存したもの」です。Excelで見れば普通の表ですが、AIやPythonにとっては非常に扱いやすい形式です。

だから、仕事を整理していくと、かなりの部分が「このCSVをどう加工するか」という話に変わっていきます。

ここが見えてくると、AIの使い道は一気に広がります。

たとえば、顧客リストがあるとします。そこに氏名、メールアドレス、都道府県、申込日、商品名などが入っている。

このとき、やりたいことはいくらでもあります。

東京の人だけを抜き出したい。
申込日の新しい順に並べたい。
同じメールアドレスの重複を消したい。
姓と名を結合して新しい列を作りたい。
不要な列を削りたい。

これを全部Excelでやってももちろんよいのですが、毎回同じような作業が出てくるなら、AIにPythonを書かせて処理した方が早い。

しかも、一度やり方が決まれば、次からはほとんど同じ指示で済みます。

ここで大事なのは、自分でPythonを全部書けることではありません。必要なのは、「何をしたいのか」を順番に言えることです。

たとえば、
1.空欄の行を削除する
2.メールアドレスの重複を消す
3.申込日の新しい順に並べる
4.必要な列だけ残す
このように処理を分けて考えられると、AIはかなり正確にコードを書いてくれます。

逆に、ただ「この表をきれいにして」と言うだけでは、何となく動くものは出てきても、仕事で使える精度にはなりにくいのです。

つまり、AIを使うときに必要なのは、曖昧なお願いではなく、処理の分解です。

そして、この「処理の分解」を一番練習しやすいのが、CSVの整理です。

なぜなら、結果が目で見てわかりやすいからです。並び順が変わった。不要な列が消えた。重複がなくなった。新しい列が増えた。どこが変わったかがすぐに確認できます。

これは、AIに仕事を任せる練習として非常に向いています。

最初から難しいシステム開発を考える必要はありません。まずは、毎日どこかで発生している「面倒な表作業」を見つけることです。

そして、それをAIにこう頼むのです。

「このCSVから空欄行を削除して」
「この列だけ残して」
「日付順に並べ替えて」
「同じメールアドレスを1件にまとめて」

これだけでも、かなり仕事になります。

むしろ、仕事の現場では、こういう地味な作業を速く正確に処理できることの方が価値が高い場合が少なくありません。

AIというと派手なことを期待しがちですが、実際には「人がやると面倒な単純作業」を次々に渡せるようになることの方が大きいのです。

CSVの整理ができるようになると、AIは単なる会話相手ではなく、実務の補助者になってきます。

そして、ここから先に進むと、CSVを読む、並べ替える、抽出する、集計する、別の形式で保存する、といった作業が少しずつつながっていきます。

そうなると、AIに任せられる仕事の幅はさらに広がります。

Pythonの勉強というと身構えてしまう人も多いのですが、入口はもっと小さくてよいのです。まずはCSVを整理する。この一点から始めるだけでも十分です。

AIに仕事を任せる力は、難しいコードを書く力ではありません。自分の仕事を、AIが処理できる形に置き換える力です。

CSVは、その最初の練習台としてとても優れています。